初夏の浄瑠璃寺

浄瑠璃寺参道に植えられた珍しい「紅すもも」、葉も実も濃い紅色である。花がどうだったかは覚えていないが、春の資料を見れば写されているだろう。

本堂前。境内は初夏の雰囲気で、野生のアザミの群落がそこここに見られた。

振り返ると弁天池の向こうに三重の塔が望める。道は池畔を通っているので、かなりの急石段を登ることになる。このあと初夏の静かな境内に事件が起こった。

三重の塔に登り、いつものように塔と木々の調和(もしくはせめぎ合い)の写真を撮る。今回は陽がほぼ南中しているために強い光を感じた。しかしゴーストの出方は穏やかである(これはレンズが良いため)。

塔の前の石段から本堂を見た。ここで87歳の老人が下りる際に足を滑らせ、下まで転げ落ちたのである。本人の意識はあったが動くことはできず、若い観光客が救急車を呼んだ…山中なので町から救急車が着くまで30分近くかかり、参道前からストレッチャーが入って病院へ運ばれた。塔へは横に池畔に下りるスロープもあり、そちらから上り下りするべきだっただろう(筆者はいつもそうしている)。自然な景観に配慮して石段には手すりがなく老人には少し厳しい下りなのである。

池畔の休憩所から本堂方向を見る。初夏の雰囲気が心地よい。本堂と塔を除いてはぐるりと回るだけなのだが、歩くうちに植生が変化し、360度回るうちに陽光の角度も変わり、また季節によっても変化が見られ、ここの庭園は気持ちが良い。おりしも木陰では僧侶が観光客に寺の歴史や由来について説明をしていた。石段落下事件の憂乱の過ぎたあとはまた静寂が戻っていた。