雨が降りそうな雰囲気となった境内を更に踏み込むと、一段と深山の趣が出てくる。三方を山に囲まれ、木々も高く茂っているため、それほど広い場所ではないとしても、山の深さを感じられ、手前の蓮池から奥の杉林までよく造られていると思う(40年以上見ているため、時の変化や寺の努力も知っている)。ここは重文:三重塔を中心とした世界である。
周りの山には回廊のように小径が登り下りしながら一周していて、色々な角度や高さから三重塔の姿が見られるように仕組まれている。下からはまったく見えない、それとない小径だ。
池の反対側から見た三重塔、小径は更に高巻いて山を登っていく。ここは三層部と同じ高さだが、上から眺められる場所もある。普段は下から見るため屋根の飾りのような相輪も、水平位置から見るといかに大きなものかが分かるだろう。重文と言うからではなく、ここの三重塔は筆者のもっとも好んでいる景観も含めたしつらえである。