崖の養生で元からの階段はコンクリートに塗り込められ、すでにどこにもつながっていない。土地がないため流しが家の外にあるのも漁村ではよく見かける景色である。先のお堂もコンクリートに半分埋まっている。
しかしここでも中を覗くと新旧の地蔵菩薩が大切に祀られていた。特別の日ではないのだが、お供えもついさっき置かれたように思われる。
風雨が強いため社の建つ岬から、また崖下の町並みに退散する。いくら養生してあるとは言ってもヒビだらけで、グラっときたら家々は押しつぶされそうである。手前の家など車はもちろん、スクーターや自転車でも玄関まで辿り着けない。向こうの家は増改築が多く見られたが、どうやって資材を上げたかも分からない。
狭い路地へ入ると雨風はなくなる…ここなら自転車で入れる。猫と目があったので1枚撮影。路面の舗装も素人仕事で何度もやり直されていて複雑な模様となっている。そもそもここは道ではなく私有地の一部なのだろう…建てられる場所に固まって家が建てられ、その隙間が自動的に通路になっていると思われる(漁村はどこも似た景色)。
崖を直接登れないため、またムラの中に戻り、細い階段を上ったところにエビス社はあった。まさに海の神様にふさわしい場所だが、強烈な風と雨である。もとは木造の神殿が建っていたと思われるが、台風で吹き飛んだようで、今はコンクリート製の社がふたつ建っていて、こちらが小さな拝殿、背後にやはりコンクリート製の小さな本殿がある。
海に背を向けて(吹く風が強いから)ガッチリした本殿の中にやはり石造りの社が収まっていて、エビス様と対面した。実際は格子があって、これは格子の隙間から撮影したものである。ちゃんと掃除とお供えがしてあり、依然として漁師の信心は厚そうである。この社には不思議な祀られたものがいくつかあり明日紹介する。エビス様の横にも変わった像が立っている。
さっそく雨を避けて集落内に入る…雨が降っていても傘が要らないのは本当である。このような路地がほとんどのため風も雨も防げる…案外土地が狭いだけではなく太平洋の風波を避けるのにも役に立っているのかも知れない。
集落の西外れに着くと岩山にめり込むように家が建っていた。これは元の崖ぎりぎりに建てたのが崖崩れ防止の処理をした結果、家の一部にセメントが被さったようである。この岩の上に海神の社がある。
津久見の町はさながらセメント関係の企業城下町である。連絡船から見える景色も工場と貨物船ばかりが目立っていた…小雨の降るなか出発した。
30分ばかりの航海で保戸島に着いた…雨はだんだん激しくなっていく。この島は他の多くの離島と異なり漁業で成功している島で、せまい居住地に(平地はほとんどない)1000人あまりの人々が生活している。島に接近すると多くの家はコンクリート造りの三階建てで、斜面を這い上がるように建ち並んでいるのが見て取れる。字はここだけで、あとは森林が占めている。集落は画面の両方に少しは広がっているが、おおむねこれで全部で人口密度はたいへん高い。
カメラは島歩きに一番適しているこれだ。ただし今回はもう少し画角の広いレンズにすべきだった(離島としてこんなに建て込んだ島は初めてであった)。
今日はまた近所の如来堂付近の乱開発現場を台風20号の通過後の記録をしてきた。7月の豪雨と台風でそうとうに土壌の流失があったが、今回の台風でも造成地の法面の養生がなされていないために、更に大きな土砂がムラの水路に流れ込んでいる。中央の如来堂のある山だけは開発からは逃れているが、お堂の基礎の部分まで崩れつつあり(雑草が生えていて一見なんともなさそうに見えている)危険な状態は変わらない。
上の写真の反対側、お堂から見た。やはり土壌の溝は深くなっており、すぐ左は集落があって土砂はどんどん流れ込んでいる。今のところ用水路が溢れるまでには至っていないが、あと2-3個の台風が来れば、仮に土砂崩れまでは行かなくても集落内水路の氾濫の心配もある。 OLYMPUS E-330+ZUIKO 7-14mmF4